(≡^ω^)

わずか2晩で4万ペソもの大金を掻っ攫っていった
少年に対し、香港マフィアは報復を決意した。




恋人のキャサリンを人質に取られた少年は
一人、魔都高田馬場へと向かった。
マフィアに指定されたのは、「W」という店。
表向きは小洒落れた麦茶バーだが
裏では高レート麻雀を開催しているという、闇の顔を持つ。




店に入ると二人の男が席に座っていた。
少年は一目で、この男たちが何者かが分かった。
白兄弟・・香港の闇世界でも、屈指の腕を持つ兄弟博徒である。
兄の白川(パクシェン)は、上海の名門、東京(トンキン)理科学院を中退し
博打の道に入った筋金入りのクズである。
弟の白石(パクシィ)も、なんだか分からないが
とにかくクズである。





「へへっ兄さんよく来たね。俺たち兄弟に恐れをなして逃げたと思ったよ」
「キャサリンはどこだ?!キャサリンを返せ!」
「天才ギャンブラー様も、女のこととなると形無しだなw」
「まあ焦りなさんな。キャサリンは無事に返してやるさ。だが・・」










「お前が27時間耐久麻雀に耐えられたらの話だがな。」













女を人質に取られては、白兄弟の要求を断れようはずもなく、
少年は27時間耐久麻雀を受け入れた。


白兄弟は、闇世界の博徒にふさわしいクズのような麻雀を打つ。
兄の雀風は、筋引っ掛けや地獄単騎を中心とした
人を嵌める麻雀である。食い散らかすのもお手の物である。
弟は裏ドラや、一発、赤牌を中心とした
運麻雀が特徴である。


それとは対照的に、少年の麻雀は形の美しさを追及した
面前重視の重厚な手作りが特徴であり、
白兄弟の麻雀とは相性が悪いことは明白だった。


対局は兄弟たちの独壇場であった。
「リーチ一発ツモドラ5」
国士無双
「ツモドラ8」等のクズの極みのような役を
次々と和了っていく。
少年の和菓子作りにも似た繊細で美しい麻雀では、
どうしても速度で劣っていた。


地力の差で稼いだ20000ペソものリードは、
夕方に差し掛かる頃には0になっていた。

もう後が無い少年の元に
神が舞い降りた。



【南3局少年の配牌】
東東東南南南西西西北北北白白



天和大四喜四暗刻クアドラプル役満である。
これを和了れば、少年は確実に勝ったに違いない。


















だが・・・少年は和了らなかった。
少年には、神の声が聞こえた。
「少年よ、おぬしは今まで良く頑張った。この配牌は、おぬしの
清廉潔白な麻雀に対して、私が与えた褒美である。何故和了らぬ?」


「神様ありがとうございます。
私のようなものに、このような手を与えていただいたことは
大変感謝しております。
しかしながら、私はこの手を和了るわけにはいきません。
このような運に頼った手は、私の教わってきた麻雀ではないからです。
もし和了ってしまっては、白兄弟と同じクズに成り下がってしまいます。」


少年は黙って白を切った。
そして東を切り、南を切り、西、北をそれぞれ切っていった。
14巡後、少年はタンピン「2000点」をあがった。
点棒は2000点しか増えなかったが、
少年にとっては20000000000000点の価値がある和了だった。






最終的に少年は、10000ペソの損失を出していた。
しかし少年は、自分の麻雀を貫き通すことができたことに満足だった。
あれは神ではなく、悪魔だったのだろうか・・・


いや、もはやそれはどうでもいいことだ。
少年はワセダをでると一人帰路についた。
早く帰って寝よう。
キャサリンのことは、もうどうでもいいや。